横浜三時空 あらすじ
第二次大戦で戦死した桜井中尉の妻のもとに、その墓参りのため遠く*石見に住む叔父が訪ねてきた。六十年ぶりに訪れた現在の横浜の変わりように驚いた叔父。その語りからこの物語は始まる(狂言開口)。
思いがけぬ叔父の訪問を受けた桜井中尉の妻は、叔父と昔語りをしたその晩、夫をしのびながら眠った枕に古代の*防人、*服部の於由の亡魂を見る。 彼は桜井中尉の前世の姿であり、桜井中尉の妻もまた、服部の於由の妻、*服部の砦女の生まれ変わりであった。ようやく出会えた二人は、この世では二度にわたって遂げられなかった永遠の愛と婚姻を果たし喜びに舞う。
その祝婚のさなかに、*袖ヶ浦洲崎大神の安房大社の神、*天太玉命が船で海上に現れ、*十二天の神々とともに彼女らの婚姻を祝福し、横浜の平和と繁栄を祈る−。
現代と古代の重層した時間、神話の世界を自由に行き来し、現実と夢の混交のうちに、横浜の港と都市の繁栄を織り込んだ、能ならではの世界がそこに広がる。
注)
*石見 旧国名。現在の島根県西部に相当。
*防人 大陸からの侵入を防ぐ目的で、主に東国から九州地方に派遣された兵士。
*服部の於由 万葉集に登場する都筑郡の人。都筑郡は横浜市の北西部。天平勝宝七(755)年、防人として筑紫(現九州の北部)に派遣される。
*服部の砦女 服部の於由の妻。
*袖ヶ浦 埋め立て前の横浜湾の呼称。
*安房大社の神 現在の神奈川区青木町にある洲崎大神のこと。源頼朝が安房国(現在の千葉県南部)の安房神社の神を招いて建立
*天太玉命 日本神話に登場する神。忌部氏(後に齋部氏)の祖の一つとされる。
*十二天 仏教における十二の神。四方・四維の八、上・下の二、日・月の二から成る。帝釈天(東)、閻魔天(南)、梵天(上)など。現在、本牧に本牧十二天の地名が残る。
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